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入り口を出てとりあえず新井はあたりを見回した。新井は多少期待していた。誰かいてほしい。しかし誰もいなかった。いや、いるにはいたのだが―――それは胸から20cm程度の棒―――その先には戦闘機の尾翼みたいなのが4枚ついていたのだが―――を生やして仰向けになった遠藤竜志(背番号21)の死体だった。 「は…はは…」 無意識のうちに乾いた笑いが漏れた。これは何かの冗談だろ?よく出来た蝋人形だな?おい遠藤さん、起きてくださいよ…遠藤さん? 遠藤に近づこうとしたその時、ヒュンと鋭い音がして、新井の眼前を銀色のものがかすめた。新井は思わず内角を突かれた時のように体をのけぞらせる。その銀色の…遠藤に生えてるものと全く同じ矢は後一歩のところで新井をとらえることなく新井の足もとに突き刺さった。新井は瞬間的に地面に突き刺さった矢を抜くと眼前に広がる雑木林を見やった。何かが動く。 ―――そこか! 獲物を捕らえた新井の動きは素早かった。立浪のライトオーバーのヒットを早く捕球しアウトにした時に投げたボールと同じくらい(もっともあの時はディアスのナイスカバーもあったが)美しい軌跡を描いた矢はその獲物を襲った。矢を受けた“それ”は「うっ」と短い呻き声をあげるとバランスを崩し、そのまま地面に落ちてきた。空はさっきよりさらに幾分明け、近づけば人の見分けくらいはつくようになっていた。 落ちてきた影を見て新井は驚いた。それは河野昌人(背番号12)であった。河野の体の先に武器と思われるボウガンが転がっていて、さらに足もとに落ちているデイパックには無数の矢が残っている。 新井は血の気が引くのを感じた。間違いない、この糞みたいなゲームは既に始まっているのだ!少なくとも河野はこのゲームに乗り、遠藤を殺したのだ。やばい。逃げよう。河野のほかにこのゲームにのった人間がいたとすれば…と考えて新井の頭の中にある人物が浮かんだ。 ―――森笠が危ない!あの足ではロクに逃げられない!! しかし新井と森笠の背番号=出発の順番は大分離れている。危険を承知しながらも負傷した友を見捨てることができず、新井は雑木林の中に身を隠した。 【残り52人】
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